ずっと昔から作業場にあって、「いったい何歳なんだろう?」と思う道具や機械たち。
昭和7年生まれの母が「子どものころからあったよ。」という道具もいくつかあります。
全て令和の今も現役で、工房には無くてはならない大切な道具と機械です。
押し切り
○団扇骨の周囲を切り落とし、大きさを整えるのに用います。
母は、貼り上げた団扇の周囲をケージなしでぐるっと丸く裁つことができましたが、なかなかそこまではできません。
金型Ⅰ
○断裁機で紙を裁つときに使うのが左の金型、貼り上げた団扇の周囲を裁ち落とすときに使うのが右の金型です。
金型は団扇の種類だけあり、また、団扇屋によって微妙に大きさや形が異なります。
金型Ⅱ
○油圧式断裁機を導入する以前は、断裁用の金型を当て、木槌で叩いて周囲を裁ち落としていました。
○昭和初期から使っている木槌は令和の今も現役ですが、すっかりやせ細っています。
七輪&ストーブ
○団扇骨に焼き入れをするときに使います。
炭火で炙るのが一番良い、と言われていたので、ずっと七輪を使っていましたが、3年前に作業中に地震が来て大変怖い思いをしたので、自動消火装置付きのストーブに切り替えました。
○芯を最小にしてもストーブの火が強かったので、悩んだ末に煉瓦で調整! Good job!
篭刷毛
○団扇骨に糊を着けるときに使う刷毛を、篭刷毛といいます。
もう店頭では販売していないので、刷毛屋さんに注文して作ってもらっています。
ぬれたままだと台木と台木に挟まれた部分の毛がちぎれてくるので、作業が終わったら、必ず洗って、よく乾かします。
へら
○団扇貼り、1本1本の骨を等間隔に分けるのに、竹べらを使います。
竹べらは、細い骨の側面を滑らせ、紙との接着面の糊をこそげ取ってしまわないように、下から上に動かします。
さし棒
○完成した団扇や製作途中の団扇は、下部にひもを通したさし棒という長い竹にさして、天井の掛け干しに吊しておきます。
初めて工房を訪れた方たちは、天井にたくさんの団扇が掛けてあることにびっくりされるようです。
断裁機
○貼りあげた団扇の周囲を断裁するのに、今は油圧式断裁機を使っていますが、つい最近まで足踏み式の断裁機を使っていました。
足で踏むと大きな音がして、上の刃が下りてくる仕組みです。職人さんたちは断裁機などとは呼ばす、音を真似て「ガチャン」と呼んでいました。
○油圧式断裁機は、ネットで調べたら、昭和50年代の機械のようです。
とても重くて、工房にはクレーン車で搬入してもらい、「ころ」で動かしました。
ロール
○へり紙をつけて完成した団扇は、最後の仕上げとして このロール機にかけます。
紙を骨に密着させるとともに、扇面に貼り込んだ骨をきれいに浮かび上がらせる効果があります。
この機械は、「ガチャン」とともに、昭和20年代に、疎開から定住した鉄工場の親方が設計して作ってくれたもの。歯車の組み合わせをみると、よく考えたなあと感心させられます。